近年、物価上昇や人手不足を背景に、多くの企業が賃上げに取り組んでいます。しかし、中小企業にとって継続的な給与アップは容易ではありません。
だからこそ、これからの時代は、「給与を増やす」だけでなく、「資産を増やす」仕組みを会社が提供することが重要になってきます。
その代表的な制度が、企業型確定拠出年金(企業型DC)です。
企業型DCは、会社が掛金を拠出し、従業員が自ら運用する企業年金制度であり、老後の資産形成を支援する制度です。
伊藤忠商事の事例が教えてくれること
伊藤忠商事では、社員持株会を通じて40年以上にわたり自社株を積み立てた女性社員が、退職時には10万株を超える株式を保有し、時価約8億円、年間配当約2,000万円という資産を築いた事例が紹介されています(CEOメッセージ 総合レポート2025)。
もちろん、この成果には会社の成長や株価の上昇という要因もあります。しかし、この事例が私たちに教えてくれる本質は別のところにあります。
それは、
- 毎月、コツコツと積み立てること
- 長期間継続すること
- 複利の力を活かすこと
この3つが、将来の大きな資産形成につながるということです。
資産形成は、一度に大きな利益を狙うものではありません。時間を味方につけ、長期にわたって継続することが重要です。
中小企業では企業型DCが最適な理由
中小企業では、上場企業のように従業員が自社株を積み立てることは現実的ではありません。
また、自社株だけに資産を集中させることは、勤務先の業績と個人資産が同時に影響を受けるため、リスクも大きくなります。
その点、企業型DCでは、国内外の株式や債券、全世界株式などへ分散投資することができます。
つまり、「長期・積立・分散」という資産形成の基本を実践しながら、老後に向けた資産づくりを進めることができる制度なのです。
会社にとってのメリット
企業型DCは、従業員の将来を支援するとともに、会社にとっても次のようなメリットがあります。
- 従業員の金融リテラシー向上につながる
- 従業員の老後資産形成を支援できる
※なお、選択制企業型DCでは、制度設計によって社会保険料の軽減が期待できる場合があります。
従業員にとってのメリット
企業型DCは、「時間」を味方につけることができる制度です。
例えば、毎月2万円を30年間積み立て、年率5%で運用できた場合、積立元本は720万円ですが、運用益を含めると約1,600万円を超える資産になる可能性があります(将来の運用成果を保証するものではありません)。
さらに、運用益には一定の税制上の優遇があり、効率的な資産形成が期待できます。
給与を受け取るだけではなく、毎月積み立てた資産が将来大きく育っていくことは、従業員にとって大きな安心につながります。
「給与を増やす」だけではなく、「資産を増やす」時代へ
今後、企業に求められるのは、給与や賞与だけで従業員を支えることではありません。
会社が従業員の将来の資産形成を応援し、安心して働き続けられる環境を整えることが、これからの企業経営においてますます重要になっています。
企業型DCは、そのための有力な選択肢です。
「給与を増やす」ことには限界があります。しかし、「資産を増やす」仕組みを提供することは、従業員の将来に大きな安心をもたらします。
これからの時代、中小企業だからこそ、企業型DCを活用し、従業員一人ひとりの将来の資産形成を支援することが、企業に求められる大切な役割の一つになっていくのではないでしょうか。