AI時代に求められる「問題を提起する力」
AIの進化によって、私たちの仕事のあり方は大きく変わろうとしています。
最近、山口周氏の『人生の経営戦略』を読んで、とても印象に残った言葉がありました。
「AIによる代替への3つの対抗策。3つ目は、『問題を提起する力を高める』ということです。」
(山口周『人生の経営戦略』142頁)
この言葉を読んで、「AI時代に本当に価値を持つ力とは何か」を改めて考えさせられました。
AIは「正解」を出すことが得意
本書では、
「人工知能は『正解を出す機械』です。」
(同書141頁)
と述べられています。
生成AIは、文章作成や情報整理、データ分析など、与えられた問いに対して短時間で答えを導き出します。
その結果、本書では「正解の過剰供給」が起こると指摘されています。
正解が誰でも簡単に手に入る時代になれば、「正解を知っていること」や「正解を早く出せること」の価値は、これまでより低くなっていくでしょう。
本当の問題を見つけることが大切
AIは、問題が明確であれば優れた解決策を提示してくれます。
しかし、その前に考えなければならないことがあります。
「本当の問題は何なのか」という問いです。
例えば、会社の利益が減っているとします。
そのとき、
「売上を増やそう」
という答えは、一見すると正しく思えます。
しかし、本当の問題は、
- 粗利益率が下がっているのかもしれない
- 値上げが十分にできていないのかもしれない
- 一人当たりの生産性が低下しているのかもしれない
- 利益は出ているのに資金が残らないことなのかもしれない
原因によって、取るべき対策は大きく変わります。
問いを誤れば、どれだけ正しい答えを出しても、本当の課題は解決できません。
だからこそ、AI時代には「問題を解く力」以上に、「問題を提起する力」が重要になるのだと思います。
違和感が、問いの始まりになる
経営では、数字だけでは見えない違和感があります。
例えば、
- 売上は伸びているのに利益が増えない
- 利益は出ているのに現預金が増えない
- 社員は増えたのに忙しさが変わらない
- 昔から続けている仕事だが、本当に今も必要なのだろうか
こうした違和感をそのままにせず、
「なぜだろう」
と問いを立てることが、経営改善の第一歩になります。
本書では、AIによる代替への対抗策として「感性的・感情的な知性を高めること」も挙げられています。
数字を分析する力だけでなく、違和感を感じ取り、問いにつなげる力も、これからますます重要になるのではないでしょうか。
決算書は「答え」ではなく、「問い」を見つける資料
決算書や試算表を見ると、
「今月の利益はいくらか」
「税金はいくらか」
という答えに目が向きがちです。
もちろん、それらは大切な情報です。
しかし、AIや会計システムの進化によって、数字を集計し、答えを導き出すことは、これからますます効率化されていくでしょう。
だからこそ、決算書を見る視点も変わっていくのではないでしょうか。
本当に重要なのは、数字から問いを見つけることです。
- なぜ粗利率が下がっているのか
- なぜ利益が出ているのに現預金が増えないのか
- なぜ売上は伸びているのに、一人当たりの生産性が下がっているのか
数字を眺めるだけではなく、その背景にある原因を考える。
決算書は、「答えを見る資料」ではなく、「経営課題を見つける資料」として活用することが、これからますます重要になると感じています。
AIに答えを任せ、人は問いを考える
これからは、人とAIがそれぞれ得意な役割を担う時代になっていくでしょう。
AIは、情報を整理し、分析し、答えを導き出します。
一方で、人に求められるのは、
- 違和感に気づくこと
- 問いを立てること
- その答えをもとに意思決定すること
です。
AIが「答え」を出してくれる時代だからこそ、
「何を問うべきか」
を考えることの価値は、これまで以上に高まっていくのではないでしょうか。
「問題を提起する力」とは、本当に解決すべき課題を見つける力なのだと思います。
AIを使いこなすことも重要ですが、それ以上に大切なのは、AIにどのような問いを投げかけるかです。
問いが変われば、得られる答えも変わります。
その答えが、より良い意思決定につながっていくのではないでしょうか。